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  • 私は研究者であり、そして、医師です。未だ治療法が見つからない患者さんのために、研究で得た成果を現場の治療へ繋げていくことを常に目指しています。

  • 2023/12/08 14:28 公開  MGI
  • 東京2023年12月8日 /PRNewswire/ -- 順天堂大学 難病の診断と治療研究センター センター長 岡﨑康司先生にお話を伺いました。

    岡﨑先生は、岡山大学の医学部を卒業後、循環器内科医としてスタートされました。5年ほど経ち循環器専門医の資格も取得し、経験を積まれた頃にふと自分のやるべきことは他にもあるのではと大学院へ進まれゲノム医学を専攻されました。まさに1990年頃、世界でヒトゲノムプロジェクトが始まり、人類の月面着陸プロジェクトに次ぐ壮大なプロジェクトと世界中で言われていた時です。

    「今では1台のシーケンサーを用いて約2日で20人のゲノムが読めます。当初は1990年から約13年かけてやっと1人分のゲノムが読めた時代でした。世界中で1400億円かけて・・・」

    順天堂大学 教授大学院医学研究科 難治性疾患診断・治療学
    難病の診断と治療研究センター センター長
    順天堂医院 ゲノム診療センター センター長 
    医学博士 岡﨑康司(おかざき・やすし)
    1986年に岡山大学医学部医学科を卒業後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターチームリーダー、埼玉医科大学ゲノム医学研究センターゲノム科学部門教授、埼玉医科大学ゲノム医学研究センター所長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターゲノムネットワーク解析支援施設施設長等を経て2017年より現職。
    日本遺伝性腫瘍学会、日本ミトコンドリア学会、日本人類遺伝学会等所属学会多数。認定内科医、循環器専門医、臨床遺伝専門医、認定産業医

    Q:難病の診断と治療研究センターについて教えて頂けますでしょうか?

    当センターは、難治性疾患の病因解明ならびに治療法の開発を目的として2016年に設立されました。初代のセンター長は新井一学長が務められ、私は、2017年よりセンター長として着任しております。

    Q:具体的にどのようなことが行われているのでしょうか?

    基本的には、未だ診断がつかない難病の患者さんの診断と治療を目指しています。

    そのためには、臨床各科と基礎研究を密に結びつけるトランスレーショナルリサーチを加速化させる必要があり、ゲノムの解析部門「ゲノム医学研究・難治性疾患実用化研究室」と再生医療の部門「難治性疾患・再生医療実用化研究室」の2部門を設置しております。

    「ゲノム医学研究・難治性疾患実用化研究室」では、医学研究科・難治性疾患診断・治療学講座をコアに据え、なかなか診断がつかない難病の患者さんについて、発症要因や病態の解明ならびに、治療法の開発を推し進めています。

    私たちが長年携わってきているミトコンドリア病をはじめとし、遺伝性腫瘍、超早期発症遺伝性腸疾患や、その他の遺伝性疾患を研究対象としています。

    「難治性疾患・再生医療実用化研究室」では、難治性疾患に対する有効な薬剤の創出や患者さん固有の細胞治療をはじめとする再生医療等の治療法の提供を目的とし、先端医療の臨床研究の拠点を形成していくことを目指しています。

    当研究室にはセルプロセシング室(CPC)及び試験室(実験室・培養室)が整備されていています。そこでは、例えば糖尿病の壊疽が起こっている患者さんの細胞を培養してiPS細胞を作り、患者さんの体に戻す治療をしています。また、T細胞という免疫細胞を取り出し、その細胞ががんを攻撃できるようになってから戻す免疫療法など、新たな治療法の創出のための臨床試験もいくつか実施しています。

    また、難病の診断と治療に関する教育、研究、診療を実現していくために、若手医師・研究者・大学院生が参画しやすい環境の整備にも取り組んでいます。

    Q:ミトコンドリア病についてもう少し教えていただけますでしょうか?

    ミトコンドリアは全身の細胞の中にあり、エネルギーを産生する働きをします。

    このミトコンドリアの働きが低下することが原因でおこる病気を総称してミトコンドリア病と呼んでいます。生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変異を持っている方が発症するケースが多く、出生あたり2,000人に1人の割合と言われています。日本人の出生人数は年間約100万人ですので、年間500人ぐらいの方が発症していることになります。また、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働きが低下して起こる場合もあり、こちらは約1,500人~5,000人に1人の割合で罹患すると言われています。

    概して遺伝病の原因遺伝子は1個か2個ぐらいですが、ミトコンドリア病は1,500個程あると言われています。私たちは15年ぐらいかけて約3,000人のミトコンドリア病の患者さんのコホートを収集しその中から約2,000人に対してパネルシーケンスや、全エクソームシーケンスを実施し、遺伝子診断体制を作り上げました。臨床診断のための遺伝子パネルには今まで解明された約400個の原因遺伝子が搭載されています。その中の13個は私たちが世界で初めて見つけた遺伝子です。

    このミトコンドリア病の遺伝子検査が2020年より保険適用となったのを機に、検査システムそのものを臨床検査部へ移して臨床検査もできる形にしました。ただ、この遺伝子パネル検査でミトコンドリア病の診断がつかない患者さんも多くいます。診断がつかなかった患者さんについては、ご本人の同意のもと更なる解析を研究として進めて行く体制となっています。(詳細は、こちらをご覧ください。)

    Q:中短期における具体的な目標などがあれば教えてください。

    難病の診断と治療研究センターがある順天堂医院には、難病と診断された患者さんが多く受診されています。また2027年11月に開院予定の順天堂大学医学部付属病院(仮称=埼玉国際先進医療センター)が開設され、順天堂大学は7つの医療施設を有することになり患者さんの数も更に増えていきます。このような背景を踏まえ、今後約3年を目途に、より多くの難病の患者さんのゲノムデータからゲノム基盤を作ること、更にはゲノム情報と電子カルテに蓄積された患者さんのビッグデータを利用した治験を進められる体制を作ることを目標としています。私のスタートは循環器内科医でしたので、未だ治療法が見つからない患者さんのために研究で得た成果を現場の治療へ繋げていくことを目指して行きたいと考えています。

    Q:特に注力されて研究を進められたい疾患はありますか?

    まずはミトコンドリア病です。そして、神経筋疾患にも注力していきたいと考えています。順天堂の神経内科はおそらく外来数が日本で最も多く、パーキンソン病の専門医の先生方が治療法を開発されているので、そういう専門医の先生方との連携も視野に入れています。

    また、小児科にはクローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患など、稀少疾患の患者さんも多く、そのゲノム解析の研究にも注力しています。新生児の異常は大人と違い遺伝によるものが多いため、遺伝子検査により診断できる確率が高いです。また遺伝子検査で診断できなかった場合でも、その対処方法を検討できます。迅速に現場の医師と連携できるシステムを作りたいと思います。

    先述のミトコンドリア病に関しても全てではないのですが、診断してみるとこの患者さんは従来の治療法では狙うことができなかったところに「核酸」を利用したら治るかもしれないというケースがあります。そのようなゲノム解析をしながら見つけていく「核酸医薬」の研究もしていきたいですね。また、AMEDのNof1(エヌオブワン)治療に合うミトコンドリア病の患者さんを探して研究をすることも考えています。

    Q:最後に、MGI社の製品を選ばれた理由を教えていただければと思います。

    現状では、ミトコンドリア病の場合、約400個の原因遺伝子の検査を保険診療で対応するためにはコストの負担が大きくなるため、MGI社の機器をレンタルで使用しています。

    MGI社の機器を選んだ理由は、理化学研究所でも経験していますが、経済的な価格にあります。

    Q:データの品質についてはいかがですか?

    使用している機器は、DNBSEQ-G99シーケンサーとMGISP-100ライブラリ調製機で、データの品質しっかりしてるという点も大きな理由です。MGI社の技術力の高さについてもよく理解していますし、更に、医療機器承認取得にも取り組まれていることも評価しています。

    今後、MGI社には診断と治療法の開発を可能にするためにも、ゲノムプロジェクト時代から見た次々世代的な(さらにその次の)、より速く正確に検査ができるものを作って欲しいし、更にコストを下げる努力もしていただけるのではないかと期待しています。

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