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  • 実現したい未来を語れ!中小企業庁主催「アトツギ甲子園」の要項を発表 サッカー日本代表・元監督の岡田武史さんが登壇

  • 2024/09/17 16:30 公開  舌肥
  • “跡継ぎ”と聞いて、読者のみなさんはどんなイメージを思い浮かべるだろう。ドラマや小説の中に出てくる印象しかない人は、きっと“財閥”とか“大企業”といった資産家のボンボンを想像するのではなかろうか。だが実際には、その多く、いやほとんどが中小企業もしくは個人商店で、資産はマイナスだったり、先代や昔から勤めている従業員とソリが合わなかったりすることも多いようだ。そんな中で「自分は跡継ぎだから」と孤軍奮闘しても、なかなか業績が上がらず、ますます孤立してしまうことも。また相談相手がほしくても、自分の置かれた状況を理解できるような人は周りにおらず、悶々としつつも日々足掻いている跡継ぎが多いという。

    そんな中小企業の跡継ぎを支援すべく、中小企業庁では2021年より全国各地の中小企業・小規模事業者の後継予定者が新規事業のアイデアを競うピッチイベント「アトツギ甲子園」を開催している。「39歳以下の中小企業・小規模事業者の後継予定者であること」が同イベントの挑戦資格なのだが、これが悩ましい日々を送る跡継ぎの現状にぴったり当てはまっていて、過去4回の開催には全国から多くの参加者が集まったそうだ。

    次回、第5回「アトツギ甲子園」のエントリー締め切りは今年12月6日。これまでの大会の様子をYouTubeで観て感化された跡継ぎは大勢いるが、多くが「自分にできるのかな?」とエントリーを躊躇している人もかなりの数いる模様。そんな不安を吹き飛ばすため、中小企業庁では全国の若手後継者と支援機関が集まるキックオフイベント「アトツギ SUMMER CAMP」を9月9日から10日の2日間にわたって東京・丸の内で開催した。

    主催者を代表して登壇した中小企業庁 財務課 課長の笠井康広さん。「昨年時点における中小企業経営者の平均年齢が、ついに60歳を超えて過去最高を更新しており、後継者の確保と育成が中小企業の存続にとってこれまで以上に重要な課題になっている。経営者の年齢と企業の売上高を分析すると、実は経営者が若いほど売上高が伸びる傾向があるが、これは至極当たり前のことで、若い経営者のほうがこれから長期的に経営に取り組むにあたって新しいことに挑戦することが多く、結果として企業の成長に繋がっている。中小企業庁としては、若い経営者の挑戦を応援していくことが重要だと考えている」と語った。

    「これまでアトツギ甲子園に参加した人たちは、地方大会、決勝大会を経るまでの何ヶ月もの間、実現したい未来を何度も何度も言語化していった。そうすると、自分でも驚くほど視座が高くなって、見える景色が変わっていったという声をたくさん聞いた。今回のSUMMER CAMPの2日間で、実現したい未来をとにかく遠慮することなく語ってほしい」と語る一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事の山野千枝さん。

    SESSION.1「イノベーションは地方から起きる 〜アトツギがおこす地方革新の可能性〜」

    ここからはスペシャルゲストにサッカー日本代表で監督を務めた岡田武史さんを迎えたトークセッションがスタート。地方経済における既存事業の可能性や新たな調整に対する心構え、そして組織経営のマネージメントについて、岡田さんとファシリテーターとして登壇した株式会社XLOCAL 代表取締役の坂本大典さんがトークを繰り広げた。

    現在はJ3のFC今治の運営会社である株式会社今治.夢スポーツの代表取締役会長、そしてFC今治高校学園長を務める岡田武史さん。「企業、組織で重要なのは人。人が成長していくのは困難やプレッシャーを乗り越えた時だが、今の世の中でそんなことをやるとパワハラになってしまう。だから、そこは対話を繰り返していくしかない」と、地方で経営者を務めてきて実感した経営者の心構えを若い参加者に伝えた。

    絶妙な舵取りで岡田さんから経営論やサッカー論を引き出した坂本大典さん。

    100人を超える参加者が岡田武史さんのトークに聞き入った。

    SESSION.2「アトツギたちの挑戦とその軌跡」

    続いてのセッションには、過去のアトツギ甲子園に出場した3人の跡継ぎが登壇。それぞれの事業紹介とともに、アトツギ甲子園に出たきっかけやその後の反響などを語った。

    「身体の状態に因らない 「本当の可能性」へのアクセス」をテーマに、第3回「アトツギ甲子園」優秀賞を受賞したテクノツール株式会社(東京都)の島田真太郎さん。「第1回は書類審査で落ちたが、第2回では審査員から色々とコメントをもらう中で事業の方向性が見えてきてアイデアを固めることができた。年に1回くるアトツギ甲子園というチャンスをうまく使わせてもらったと思う」と振り返った。

    いきなり舞台役者のようなパフォーマンスで自己紹介を始めたのは、「新開発センサーで守り抜く未来の水循環 日本の浄水技術を世界へ」をテーマに第4回「アトツギ甲子園」で優秀賞を受賞した有限会社森清掃社(香川県)の山添 勢さん。「アトツギ甲子園に出場した後、香川県知事への表敬訪問を実現。県と一緒に実証実験を行いたいと伝えたところ、すごい数の施設に問い合わせてくれた。アトツギ甲子園は本当に地域を巻き込む力があると感じた」という。

    「農畜産業界に未来を! 世界へ羽ばたく日本一のブランド卵革命」をテーマに、同じく第4回「アトツギ甲子園」で優秀賞を受賞した株式会社半澤鶏卵(山形県)の半澤清哉さん。「山形市長に表敬訪問して卵業界の現状や世界市場に広めていきたいという思いをぶつけることができたのと、従業員のみなさんに後継ぎが頑張ってるんだぞという姿を見せられた」と出場後のエピソードを挙げ、アトツギ甲子園への感謝を述べた。

    実は記者の実家もおじいちゃんの代から時計・メガネ・貴金属の小売店を九州で営んでいた。長男である私が東京から帰らないと断言したため、弟が跡を継いで3代目になったのだが、結果的に5年前に弟が病気で他界して89年の歴史に幕を閉じた。まだ病気が発覚する前に弟が電話でよく「兄ちゃん、今のままやと店は潰れるんや。なんか新しい別のことも始めんとダメや」と言っていたことを、今回のアトツギ SUMMER CAMPを取材していて思い出した。振り返れば、弟がやろうとしていたことを反対していた親父も、昔は新しいことをやろうとしてじいちゃんと対立していたっけ。結局、小さな事業を継ぐ者は代表権と同時に不安要素もたくさん受け継ぎ、それをなんとかしようともがくわけだ。当時、小売店経営のノウハウなんて持ち合わせていなかった私は、電話の向こうの弟になんのアドバイスもできなかった。もっと早く、こんな大会が存在したなら弟もあんなに苦労しなかったのでは。今、事業承継に悩む跡継ぎの人たちには、賞を取れなくてもいいからとにかく参加してほしい。参加することで、きっと何かしらもヒントが見つかるはずと伝えたいと強く感じた。

    第5回「アトツギ甲子園」 概要
    <挑戦資格>
    39歳以下の中小企業・小規模事業者の後継予定者であること

    <応募方法>
    ①公式HP(https://atotsugi-koshien.go.jp/)からエントリー
     締切 2024年12月6日(金)12:00
    ②応募フォームに入力し応募書類をメールで送信
     締切 2024年12月9日(月)12:00

    <スケジュール>
    【地方予選】
    九州・沖縄ブロック(福岡) 2025年1月17日(金)
    中国・四国ブロック(岡山) 2025年1月21日(火)
    近畿ブロック(兵庫) 2025年1月24日(金)
    中部ブロック(愛知) 2025年1月31日(金)
    関東ブロック(東京) 2025年2月4日(火)
    北海道・東北ブロック(宮城) 2025年2月7日(金)
    【決勝大会】
    2025年2月20日(木) 開催:東京都内

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